明けましておめでとうございます。

新年早々、Twitterで「ライトノベルのコミカライズ案件の売れ方」をデータとってまとめまーすとか言ってたのに、年末の修羅場業務とコミケ疲れにかまけてほぼ寝正月で過ごしたので何もできてません。そのうちしれっと投稿するかもしれませんが気長にお待ち下さい。まぁ原作の2倍は堅いんですが、文庫とB6版(いわゆる「新文芸」)、なろうか非なろうかでもデータが違ってきます。ただ明確な根拠はなく経験則です。

まぁその話はまた今度、ということで。

ひとまずですが、去年1年間を振り返ってみると、コミックに関してはWEB発のコミカライズ系の躍進が本当に著しい1年だったと思います。それに加えて作家さんのSNS上での告知活動などもこれまで以上に活発になっており、発売告知とあわせて書店店頭で店員に見せてサクッと問い合わせができる予約票といったツールなども比較的簡単な告知手法として広まったりと、自分の作品を売るためのやり方というのを模索されているのを見る機会も非常に多かった年ではなかったでしょうか。




その一方で、「初速が足りず、打ち切りになった」「単行本が出ません・・・」といったような作家さんの悲痛な叫びのツイートも多く見かける1年だったようにも思います。

こういった状況、作家さんが「単行本売るためならなんでもやりますよ!」と仰られるのも珍しくない中、私個人としましては作家さんの心意気以上に、書店側が「作家さんのその心意気をきちんと店頭に反映できるように、十分な展開ができるように、私達がどんな手を使ってでもやらないといけないぞ」と、この1年間を振り返って思うところです。

なぜこういう書き方をするかといえば、物理的な部分と見えないところの部分の話がいろいろとあるのですが、ぶっちゃけた話をするのであれば売りたい作品を発売時にしっかりと配本を確保して売りにいこうとするためのハードルが近年、年々上がっているというのがあります。

まず第一に初版部数の抑制傾向の顕在化は間違いなくあります。新作タイトルに限っていうと10年前と比べるとおそらく総量比で3分の2ぐらいになっているんじゃないかなというのが正直なところです。ひょっとするともっと落ちているかもしれません。そして宣伝費をかけるかかけないかでも部数がかわってくると思います。ただ、これは一概に「版元さんがリスクを回避している」とかそいういうことは一概に言えなくて、書店と版元の間にあるところが「(部数を)入れてくれない」というのが特に昨年後半顕著になっているような話をちょいちょい聞くようになっています。つまるところ取次が入れてくれないから刷れないと。

上記の流れで発売日を迎えるにあたって、蛇口(取次)が絞られて、水(初回配本)が必要量欲しいのにチョロチョロパッパで干上がる池(店頭)となってしまうという構図になります。また、蛇口の先というのも力関係みたいなものがやっぱりあって、一般書店への配本というのが不利になりがちなケースが多いです。昨年はこれに悩むことが本当に増えました。自社に(自店に)配本ないのに専門店めっちゃあるやん・・・余っとるやん・・・みたいなね。

こうなると当然ながら出版社にもこういう状況ですというのを相談したりもしますし、「ちょっとこの配本数はありえないよね」というニュアンスのお答えもいただくケースも多いのですが、現状の各所への力関係だったり仕組み上の話とか(この辺の話はちょっと詳細言えませんが)いろいろありましてなかなか動かしづらい環境状況である、というのがいまの現状です。

もうひとつ、頑張らねばならない部分があるとすれば、先にもすでに上げているのですが「電子」的な取り組み部分の話です。

以前から業界内には紙と電子の部分でのバッティングといったような話が度々上がっていることがありましたが、他の書店の担当者さんが集まる場ではもうすでにこういった論調は皆無です。むしろ、「電子」の情報が欲しい、「電子」から波及される店頭での効果に期待したいといった声が圧倒的多数です。バナー広告がどの作品でいつからどの配信会社が打つのかとかいった部分なりますが、それにあわせて仕入れをするというのも増えました。これに加えてWEB発コミック、とりわけSNS発コミックの台頭が本当に顕著な1年でもありました。漫画雑誌が売上を落とし、連載自体も「各レーベルHP上の連載」であったり「pixiv上の各版元のレーベルページ上での連載」「ニコニコ静画」等々作品自体を効果的に読者にリーチさせることができる場所での、従来までの発表媒体にとらわれない展開というのも目立つようになってきました。ゆえにわれわれもチェックをかける範囲がこれまで以上に広がっています。ぶっちゃけた話作品全部追うの無理です

なので、作家さんがたのツイッター上での告知は正直なところかなり助かってます。ギリギリのタイミングでも発売う情報を拾えれさえすればすくなくとも何かしようと動くことができます。(御本人をフォローしていなくても、どこかからかリツイートがまわってきてくれれば拾えれますし、そういう意味では、世間的に「改悪」といわれるtwitterのホームの表示順についてはこれのおかげで情報を拾えてたりという部分も・・・)

さて、つらつらと直近の書店を取り巻く状況をお話させていただきましたが、特に仕入れの部分はこのまま座して待つわけにもいかないよなというところではありますが、こういった背景もありますので、今年はとにかくあらゆる意味で声をあげていかないといけないなと思っています。

版元さんとのやり取りの部分は売りたいものは予め声を上げて版元さんとで商品の確保量を握っておく努力を怠らないことかなというところです。いろんな方が書かれていますが、現状書籍の配本というのは「ランク配本」「実績配本」がメインなので、何も言わないとこの論理で撒かれた部数しか入ってきません。なので、先に上げた「蛇口」が絞られてると水が来ないなんてのもざらな状況なのですが、版元さんと「あらかじめ水量を握っておいて給水車で届けてもらう」ような仕組みも実はいうとあります。なので、売りたいものなんかは早めにお願いをして給水車出してもらうというのが対策のひとつにはなります。使えるものはつかうというか、どんな手でも使うとして使える部分の一番明確なところは実はいうとこのあたりだったりします。

ただ、当然ながら全部の作品でそんなことできませんし、仮にそんなことやった場合の版元さんサイドの業量もパンパンになっちゃいますので、そのあたりの目利きは当然ながら我々書店員に求められる能力のひつとつかなというところです。

昨年は、数年前からひたすら自社で推し続けていて「自社が一番売っているよ!」と版元さんや著者さんに言っていただいていた作品のメディア化が決まったりもしました。この作品は版元さんと上記のような施策的な握りをしっかりやったり、作家さんにも特典物もろもろ販促関連でご協力いただいたりと、こちらで「売りたい」と思った作品を方方からのご助力があって大きく展開して成功できた例かなと思っています。こういった取り組みを大小問わずもっと積極的にやっていき、話題作を少しでも多く掘り起こして読者の皆さんに店頭でお届けできるように頑張っていきたいですね。

加えて、WEBでの活動も活発にしないとなというのは思っているところです。WEB媒体での発表が増えたり、SNS上での取り組みをされている作家さんも大半な昨今ですから、それにみあった活動を書店側でもしていかないといけないのは自明であるわけですが、私も本業(プロフィールにも書いてますが某社ツイッター公式中の人兼務です)で発売告知や特典告知などなどしつつ、作家さんとのやりとりも積極的にさせていただく機会も昨年は特に増えました。こちらの告知ツイートを作家さん(編集部さん・営業さん含む)にRTしてもらったり、逆に作家さんの告知をRTしたり、時には作家さんのツイートに絡みにいったり、やりかたはいろいろですが、自社のお客さんや作家さんのファンの方にどうやって効果的に作品の告知やお店での取り組みをお伝えできるかというのを試行錯誤しながらやってきた1年になりました。書店のツイッターアカウントとしてはとにかく購入いただける可能性のあるお客さんにどこまでしっかりと届けられるのかというところなので、店頭で商品を揃えて、展開もしてというのができているところに加えて、いかにしてお店に来てもらえるのか、来店動機を掘り起こすためにもSNSの活用はやはり必須です。会社の方針上難しいとかいった止む終えない事情がない限りはコミックをちゃんと取り組むのであればそこまでやったほうがいいと思います。

ただ、ここ数年の書店店頭の人不足(これは単に人が足りないという意味ではなく、経営上の観点で「その時間に出勤させれる人数の制約が強い」とか「コミック担当者のスキルが(担当者交代等で)落ちているor担当者がいない」という意味です)が顕在化している中で店頭の細かい展開やSNSといった”ひと手間”をかけれる時間が減っているという問題もあり、一概に「よしじゃあ頑張ってもらおいうか」と言えない部分もありますし、そもそも客数が言わなくても多いようなところなんかは無理してやる必要はなくてそれこそ昔からの「於けば売れるんだから売れる作品の部数確保が命題」論法でも十分だと思います。

作家さんサイドがいろんな手を尽くして自分の本を売れるために努力されてる部分が最終的に重版であったり次の巻であったりというところにたどりつけるように、書店側ができる意気はそういった部分にはなってくるのですが、書店サイドが売るためのテクニックはなんだかんだで見えてないところでの配本しっかり確保する部分のところが本当に至上命題になってきますし、見えている部分での告知・販促活動の部分はそれを押し上げるためにやはり重要であると思いますので、とにかくいろんな方向に声を出し続けて営業努力を怠らないようにせねばと決意するところです。